ポーズも表情も衣装も付け替え可能!可動フィギュアの良さを最大限活かして、それぞれが思い描くエースを実現したい。
S.H.Figuarts
企画開発:相澤 歩
原型師:長汐 響
Q.出場されるブランドについて教えてください
- 相澤
- 「S.H.Figuarts」はコレクターズ事業部で展開しているアクションフィギュアブランドです。ヒーローや美少女系といったさまざまなキャラクターの可動フィギュアを展開するブランドとして、2023年に15周年を迎えました。ベーシックな可動フィギュアとして、国内の代表的なブランドになっていると自負しています。
Q.今回、長汐さんとタッグを組もうと思った理由を教えてください
- 相澤
- 「S.H.Figuarts」での『ONE PIECE』シリーズは過去にも展開していましたが、2023年8月に鬼ヶ島編のルフィ・ゾロ・サンジを皮切りに新しく展開をする形となり、この新シリーズの原型の多くを長汐さんに制作してもらっています。長汐さんの可動フィギュアは、初めて触る人でも格好良いポーズがすぐに作れたりと遊んでいて楽しいんです。なので、今回も面白い可動を一緒に考えたく、お声がけさせて頂きました。
Q.参加が決定したときの意気込みを教えてください
- 長汐
- 原型師としてONE PIECE 造形王頂上決戦の存在はずっとチェックしていましたが、僕は可動フィギュアの原型を手掛けることが多くて。過去の開催では可動フィギュアの参加がなかったので、今回も自分が参加することはないと思っていました。なのでお話をいただいた時はすごく嬉しかったですね。可動フィギュアはまだ「おもちゃ」として認識されているところもありますが、ONE PIECE 造形王頂上決戦はその面白さを広く知っていただけるチャンスだと思いました。
Q.今回造形したキャラクター、シーンを選んだ理由を教えてください
- 相澤
- エースの「S.H.Figuarts」は2010年にも制作しているのですが、改めて今の技術でどこまでブラッシュアップできるのかと考えました。また、エースは非常に人気の高いキャラなので、通常ラインナップでリリースするよりもONE PIECE 造形王頂上決戦という皆さんから注目していただけるタイミングで出すべきだな、と。
Q.キャラ・シーンが決定した際の感想を教えてください
- 長汐
- お話をいただいた時、「ここでエースが来たか!」と思いました。確かに、ONE PIECE 造形王頂上決戦に出すならエースですよね。「ぜひやりたいです!」と、相澤さんと意見が完全に一致しました。やはりエースは特別なキャラですから、絶対に良いものを出したいと思いました。
Q.どのような会話を重ねて制作を進めてきたのでしょうか
- 相澤
- 最初に「こういうポーズを取りたい」というキャラクター性に沿ったポーズをいくつか挙げるところから始めました。エースであれば、印象深い蹲踞(そんきょ)の姿勢から人差し指をクロスして腕を前に出す「十字火」のポーズなどですね。そこから可動のための関節について話をして、長汐さんに考えてもらった案をどんどんと詰めていった形です。
- 長汐
- 蹲踞(そんきょ)の姿勢が第一に挙げられていて、僕もそこは完璧にしようと考えていました。“取りたいポーズ”というお題をもらった上で、その要望を実現させるのが可動原型師の仕事です。可動フィギュアの魅力の一つは、自分で動かしていろいろなシーンを作るといった多彩な表現ができること。現代の可動フィギュアはより自然な可動ができるような試行錯誤が続けられていて、どんどんクオリティを高めています。あと、そもそもエースというキャラは可動フィギュアに向いていますね。上半身が裸なので干渉するパーツが少なく動かしやすく、技も派手でエフェクトパーツもガンガン付けて変化をつけやすい。なので、作っていて楽しくどんどん試作品を作って、むしろ盛りすぎてしまったくらいです(笑)。
Q.原型師さんの特性や作家性はどんな点にありますか?
- 相澤
- 長汐さんは新しい要素を入れながらキャラに沿った可動を一緒に考えてくれます。すでにあるフォーマットにただ落とし込むのではなく、これまで積み上げてきた技術をアップデートしながら、限られた時間の中でどれだけ新しく面白いことを入れ込めるかに挑戦している。なので、一緒に仕事をしていてすごく楽しいんです。
Q.現状の仕上がりについて、率直な感想を教えてください
- 相澤
- めちゃくちゃ良いです! すでに原型は触っているんですけど、実際のプロダクトを早く触りたいです。
- 長汐
- 現時点で、エースの可動フィギュアとしてのマスターピースを作れたと考えています。可動フィギュアは商品、つまりプロダクトこそが最高の状態なんです。原型の段階では関節の素材がプロダクトのものとは違っていて、ガシガシ動かすことが難しい。テストショットとして組んだ時に初めて、これでもかとポーズを取らせて楽しめるものなんです。
Q.こだわりのポイントを教えてください
- 相澤
- 『ONE PIECE』という作品はギャグも含めた面白さも魅力なので、付け替え可能な表情パーツとしてコミカルな顔をなるべく入れるようにしています。固定フィギュアはやはり「格好良さ」のニーズが高いのですが、可動フィギュアであれば表情に合わせて面白いポージングを取れるのも楽しさの一つだと思います。お客さんの手の中でさまざまなポーズを取らせることで、それぞれが思い描いたエースを実現できるんです。
- 長汐
- 帽子やエフェクトも付け替えられますし、裏テーマとしてマリンフォード頂上戦争編での後ろ手に縛られたポーズも表現できるようにしました。肩関節周りを工夫することで、今までにない可動フィギュアになっていると思います。
また、アラバスタ編でのコートという衣装パーツも今回の目玉の一つです。最近の可動フィギュアではファブリック(布地)での表現も一つの大きなトレンドで、今回のコートも布地にワイヤーを仕込んでいるのでポーズに合わせて自由にはためかせることができます。
Q.今回の頂上決戦で特に負けたくない人や、ライバルはいますか?
- 相澤
- 個人的には、ロト事業部の「魂豪示像」での原型師・岩倉圭二さんの作品は情報の密度がすごく、ユーザーからも支持を集めていますよね。「S.H.Figuarts」とは方向性は違いますがモノとして見た時のエネルギーがすごいので、「岩倉さんになら負けてもしょうがない」とは思いたくないです!
- 長汐
- 岩倉さんの作品はもちろんキャラに似ているけど、独特のタッチでひと目で岩倉さんの作品だとわかるし、それがユーザーさんからも広く受け入れられている数少ない原型師さんですね。それをマスプロダクトとして実現できるのはすごいことです。
僕のライバルは「THE GRANDLINE series」の福家悠太さんです。今回の制作にあたってこれまでに販売されたすべてのエースの可動フィギュアを研究しましたが、ケミカルアタックの坂本洋一さんが可動理念を設計され、福家さんが造形したエースのフィギュアは出来がすごかったので、そこは越えたいなと。また、可動フィギュアにとってはエフェクトパーツも重要です。いかに作中で描かれている炎の形状を拾うか、炎のような形のないものの形状をいかに自然に作れるかはとても難しいのですが、福家さんはその辺もお上手なのでそういったところも意識しています。
Q.ズバリ、優勝できると思いますか?
- 相澤
- もちろん絶対優勝したいです。一方で、固定フィギュアと比べて可動フィギュアはまだ浸透し切っていないようにも感じているので、そういう意味ではチャレンジャーという気持ちが強いです。
- 長汐
- 勝負は時の運でもありますが……可動フィギュアでの参戦は僕らだけなので、可動フィギュアファン全員が僕たちに投票してくれれば勝てると思ってます!(笑)
Q.最後にメッセージをお願いします。
- 相澤
- すごく良い作品を長汐さんと一緒に熱く作った自信があります。なので、皆さんに「S.H.Figuarts」というブランドを知ってもらって評価していただきたいと思いますし、可動フィギュア唯一の参加として、いろんな人の気持ちを背負ったつもりでいます。その上で、作品もフィギュアも盛り上がると嬉しいです。
- 長汐
- 『ONE PIECE』という最高のタイトルで、エースという最強のキャラクターをアクションフィギュアで表現できるというのは本当に幸せでした。早く僕も完成品を触りたいです。