人気TVアニメ『ONE PIECE』より麦わら一味の剣士ロロノア・ゾロの刀が劇中アイテムをリアルに再現するPROPLICA(プロップリカ)となって登場! 刀は「和道一文字」「三代鬼徹」「閻魔」の3本セットで、それぞれ全長約950mmの実物大サイズ。 “なりきりアイテム” であるPROPLICAとして、ファンなら誰もがやってみたくなる口も使って剣を構えるゾロの三刀流も追体験できます。また、「閻魔」には音声ギミックがあるなど、PROPLICAならではの魅力が盛りだくさん。今回は企画担当であるBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の相澤歩氏に「PROPLICA ロロノア・ゾロ 三刀流セット(和道一文字、三代鬼徹、閻魔)」を紹介していただきます。
――「PROPLICA ロロノア・ゾロ三刀流セット(和道一文字、三代鬼徹、閻魔)」はどんなアイテムなのでしょうか?
相澤:TVアニメ『ONE PIECE』の人気キャラクターであるロロノア・ゾロの三刀流を再現できる刀のセットです。和道一文字、三代鬼徹、閻魔の3本セットで、それぞれの特徴をギミックとともに再現しています。
▲ゾロの愛刀「和道一文字」「三代鬼徹」「閻魔」のセット。専用台座で3本並べてディスプレイ可能です。
――なぜゾロの刀を企画したのでしょうか?
相澤:今回、PROPLICAシリーズで『ONE PIECE』を企画したとき、作品として一番わかりやすいものとしてゾロの刀を第一弾にしようと考えました。そうなると刀は3本ないとゾロになれないなと(笑)。もちろん3本をディスプレイする楽しみもありますが、やはり三刀流で刀を咥えたくなりますよね。
――三刀流は企画担当としてマストな仕様だったんですね。
相澤:三刀流はゾロならでは、唯一無二の魅力ですからね。ただ、商品仕様としては非常に難しかったんです。大きな課題は安全性でした。「和道一文字」は咥えるための専用パーツがあるのですが、バネが仕込んであって、ある程度、テンションが掛かると口、歯などにダメージがないように外れるようになっています。それこそ仮に刀が何かにぶつかるとしたら、どの方向に力が掛かるのか、どの方向に外れるようにするのか、設計チームや開発チーム、品質安全を管理する他部署メンバーと一緒に考えました。やはり三刀流を再現してもらうことは大きな目的なので、周囲も含めて、安全に遊んでもらえることを最優先しています。
▲三刀流として咥えるための交換用柄パーツ。テンションが掛かると外れるようにすることで、安全性を高めています。※写真は工場試作品のため、商品版と色が異なります。
――音声ギミックについてお聞かせください。
相澤:今回、ゾロと「閻魔」の元々の持ち主である光月おでんの2人分のセリフを収録しています。「閻魔の記憶モード」ではおでんのセリフのほか、ゾロのセリフも入っています。ワノ国編でゾロがキングと戦ったとき、「閻魔」と対話して覚醒するシーンがあるのですが、「閻魔」を通じておでんの高みにゾロが近づいた瞬間だと思っていて。「閻王三刀龍 一百三情 飛龍侍獄!!!」などの技も楽しめるようになっています。また、切り替えによる「ゾロの記憶モード」には数多くのゾロの技や、ゾロの名(迷?)言を収録しています。
▲紫の刀が「閻魔」。「閻魔の記憶モード」「ゾロの記憶モード」でゾロやおでんのセリフを楽しめます。
――1本目「和道一文字」はどんな刀なのでしょうか?
相澤:劇中、ゾロが最初に手にした刀が「和道一文字」です。幼馴染みのくいなの形見として譲り受けた刀ですね。今回、私が一番やりたかった口に咥えられる仕様になっていて、一番日本刀らしいデザインだと思っています。ただ、他の2本と比べるとシンプルなデザインではあるので、見た目としてどう存在感を出していこうか検討しました。結果、柄の部分を本物の日本刀のような鮫皮ディテールを追加することにしました。さらに拭き取りの墨入れを加えて、+αの陰影によりディテールを強調しています。日本刀らしさを追求することは、モノづくりとして常に意識していました。
▲「和道一文字」。咥えやすい軟質パーツを組み込んだ交換用柄パーツと差し替えることで、三刀流を再現できます。
――鞘も本物のような質感がありますよね。
相澤:漆塗りみたいな素材感が表現できないかと色にもこだわりました。真っ白になりすぎないようなクリームホワイトで、「本物」に近づけるように調整しています。
――2本目「三代鬼徹」はいかがですか?
相澤:ローグタウンでゾロが手に入れた妖刀が「三代鬼徹」です。他の刀のように特別なギミックがない分、鞘や刀の刃紋など設定にこだわりました。アイデアとしてローグタウンでゾロが刀を手に入れるときのエピソード、刀を投げて回転したところに腕を出して刃が避けるといったギミックをジャイロセンサーで再現することも考えたのですが、さすがに断念しました(笑)。
▲妖刀として名高い業物「三代鬼徹」。設定を忠実に再現した1本です。
――「三代鬼徹」の鞘は朱塗りのような赤も印象的です。
相澤:どんな赤にするか、彩色師さんと相談しましたね。全体のバランスから、綺麗に見える赤を選びました。こちらも漆塗りのように見えたらいいですね。鞘の中央や柄部分には革製と思われる部分があって。革の質感を出すためにシボ加工を施していて、このあたりもうまく本物のような表現ができたと思っています。
▲革部分にはシボ加工を施し、本物のような質感が再現されています。
――柄の先端部“頭(かしら)”に少し角度が付いているのは仕様ですか?
相澤:そうなんです。設定でちょっと曲がっていて、不思議な形をしてるんですよ。あらためて設定や劇中を確認することで、細かな色分けやディテールに気づくところがありました。
――最後の3本目「閻魔」についてお聞かせください。
相澤:元々はワノ国の大名だった光月おでんの刀で、おでんの娘である日和よりゾロに託されました。ゾロなどのセリフを収録した音声ギミックのある、もっともPROPLICAらしい1本です。また、元の所有者であるおでんのセリフも収録しているので、ゾロと両方のモードを楽しんでもらえます。あと特徴的な刃文にもこだわっていて、熱転写シートのプリントで再現しています。
――鞘と柄の紫は艶が違いますよね?
相澤:同じ紫色を使用していますが、柄は艶無し、鞘は艶有りで差別化しました。鞘は劇中でも艶がありましたし、艶の有無の違いがあるだけでも、見映えがよくなりますからね。紫はもう少し濃くすることも考えたのですが、3本のバランスを見ながら最終的な色を決めています。
▲柄と鞘の部分では同じ紫でも艶の有無を使い分け。カラーリングのこだわりも、本物らしさのひとつ。
――鞘にある梅の花のような意匠はゴールド1色ではなく、中央に銀が入っていますよね。
相澤:これも設定通りですね。そのほか、3本それぞれ刀の柄や頭(かしら)などに金色のパーツを使っていて、設定だと一口に言ってしまうと“金色”ですが、そこにリアリティと深みを演出するため、黒1色ですがシャドウを追加しました。彩色師の方のアイデアでしたが、入れてすごくよかったですね。見る角度によって変化する金の輝きを再現できただけでなく、使い込んだ経年の質感も表現できました。
▲梅の花のような模様は金一色ではなく、中に銀を配色するなど、細部までしっかりと彩色で色分けされています。
――「閻魔」の鞘に巻かれているヒモは本物ですか?
相澤:最初、成型品で再現すること考えたのですが、なかなか難しくて。成型品は形が固定されてしまううえに、すごく不自然でした。実際の紐となると、素材コストが結構かかってしまうので悩みましたが…やはり本物にこだわった「リアルな紐」を選びました。設定イメージ通りの紐になったと思います。
▲「閻魔」用に本物の紐が付属。ユーザーが自分好みに巻くことができます。
――ゾロの刀は冒険の中で入れ替わりもありましたが、この3本をセットにした理由はありますか?
相澤:現状における最新のゾロを体験してもらいたかったんです。特に3本目の「閻魔」にはこだわりました。劇中でも「閻魔」は“刀の質”にもフォーカスされていて、ゾロに譲渡される経緯、そもそもは光月おでんの愛刀であったり、キャラクター性、物語性もあって。それこそワノ国編でゾロが覚醒するきっかけにもなっていて、セットにするなら「閻魔」と決めていました。
――企画としては最初から3本セットだったのでしょうか?
相澤:当初はそれぞれバラ売りしたほうが皆さん手に取りやすいかなとも考えていました。ただ、やはりゾロであれば三刀流を追体験したいですよね。1本ずつそろえるのであれば、まとめて3本セットのほうがよいのではないかと周囲の意見もあって。セットであれば、「刀を咥えるギミックは絶対に実現する」と腹をくくりました。
――やはり三刀流の追体験は最大の推しポイントですね。
相澤:当初の案では「和道一文字」を咥えたところにスイッチ的なものがあって、音声が出る仕様も検討しました。鞘に磁石を仕込んで、口で刀を抜いたら「獅子歌歌!」とか(笑)。咥えた状態でゾロのセリフが出れば、まさに“なりきり”ですよね。ただ、音声ギミックの機械箇所に水は絶対NGで。口で咥える以上、どうしても唾液など付着するので水洗いできるようにしておく必要がありますから。
――いろんなハードルを越えて三刀流の仕様が実現したんですね。
相澤:「安全確保シート」は三刀流を実現するための付属品です。扇形状のシートで、周囲に刀がぶつからないようにする安全エリアを確保するためのものです。三刀流で遊ぶ前に、咥えたときに周りへ危険が及ばないようにする配慮、安全を担保するためのルール作りからでした。これまで私はS.H.Figuartsなどフィギュア関係を担当することが多く、この手のギミックのある玩具はあまり手掛けてこなかったので、それこそ品質管理部署など関係者に手助けいただき、一緒にルールを決めていきました。『ONE PIECE』という大きな作品、影響力ある作品だからこそできた気がします。
▲三刀流を再現する際に使用する安全確保シート。周りの人や物に注意し、取扱説明書をよく読んでから使用してください。
――企画担当から見た『ONE PIECE』の魅力についてお聞かせください。
相澤:子どもの頃から追い続けている作品です。小学生の頃アニメがスタートして、その影響で親にコミックスを買って貰って読んでいた記憶があります。初めて大人買いした作品だった気がします。(親のお金ですが…笑)荒唐無稽過ぎない、「もしかして現実にあるかも?」と思える世界を一緒に冒険している感じがいいんですよね。最終章に突入してもどんどん新しい謎や秘密が出てきて、一読者として今後の展開も楽しみです。『ONE PIECE』の世界にはキャラクターもアイテムも面白おかしいギミックが多いので、企画担当としてはいろんなものを立体化したいですね。
――『ONE PIECE』はS.H.Figuarts、フィギュアーツZEROなどフィギュアシリーズも続々と新作が発表されていますよね。
相澤:新たに「LUFFY‘s」というフィギュアシリーズも企画進行中です。『ONE PIECE』のロゴをモチーフにしたプロダクトです。本発売に先駆けて「LUFFY’s 1/20プロトタイプ」が12/21(土)9時からプレミアムバンダイにて予約開始となります。また、「ジャンプフェスタ2025」会場来場者限定で抽選配布も実施予定です。様々なデザインやコラボ展開も考えていて、集めて楽しい、新たなフォーマットトイになればいいなと思っています。
――今後、PROPLICAで手掛けてみたいアイテムはありますか?
相澤:武器にこだわらなくてもよいと思っています。ログポースやルフィの麦わら帽子、ナミのクリマ・タクト、あとは電伝虫など『ONE PIECE』のファンならいいねって思えるものがたくさんあります。ただ、それをどう玩具として、皆さんに楽しんでもらえるように今の技術でPROPLICAに落とし込むか、悩んでいる最中です。フィギュアとは別アプローチでも『ONE PIECE』の世界観を体験できるようなものを生み出したいです。
――『ONE PIECE』のラインナップは今後さらに広がりそうですね。
相澤:そうですね。まずはロロノア・ゾロ三刀流セットで『ONE PIECE』ファンの皆さんにもPROPLICAシリーズを知っていただけたら嬉しいです。皆さんの応援があれば、次に繋がるので、ぜひ手に取っていただきたいです。手にした皆さんには、安全に気を付けて楽しんでほしいですね。社内的にもけっこう腹をくくった商品なんです。コスプレ用のアイテムとしても使ってほしいですが、三刀流では歩き回らないでください(笑)。
―――ありがとうございました。
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション