

テレビシリーズ『仮面ライダー555』が放送されていた頃に、こんなアイテムが作られたかどうか?と考えると、改めて20年という時間を実感しますね。そもそも2003年にはスマホが世の中にありませんでしたから……。現実のテクノロジーの進歩にも驚きますが、2024年の今だからこそ生み出すことが叶った商品ではないかと思います。
20周年記念の映画を作ることが決まった時点では、従来のファイズに変身するんだろうなと、漠然と考えていました。やがて衣装合わせに入ったあたりから「ファイズが新しくなるよ」と聞かされて……。そのときだんだんと「えらい大ごとになってませんか」と思い始めました(笑)。デザイン画を見せていただいたときの喜びは、大きかったですね。かつてのファイズのイメージを残しながら、現代のセンスが各部分に投入されている。身体のラインもずいぶん細くなっていますよね。

カッチリした印象がありますね。それでいて、両サイドの後ろが軟質素材で出来ていてサイズ調整も可能という。非常に優れた商品となりました。


まったく変わっていませんでした。歴代仮面ライダーの変身ベルトを管理されている小道具の中村(豊)さんも、当時のサイズのまんまで新しいベルトを調整して、持ってきてくださいました。ただ、20年前と違って僕が「厚着」をしたがっていたから、服の分わずかにキツく感じたかもしれません(笑)。撮影したのが昨年(2023年)の2月〜3月くらいで、寒かったですからね。若いころだと口では「寒い」と言いながらも、元気がありました。インナーなんて着ませんでした。それが20年の月日が経つと、ずいぶんと寒さが身に染みる(笑)。こういうとき、しみじみ思いますね。「仮面ライダーは若いうちにやっておいたほうがいい」って(笑)。

以前のファイズフォンのように「開ける」「閉じる」という2つのモーションが無くなりました。ファイズフォンを手に持って、パカッと開けて、ボタン(555)を押して、パチンと閉じる。この動作が取れないのって最初は違和感ありました。自分なりにリハーサルを重ねて、スマホの上に左手を少し被せて、右側に引くという動きを作りました。ガラケー時代の動きの名残といいますか、いくら変身アイテムが変化しても、巧が仮面ライダーに変身するときはこうだろうと思い、巧の変身ポーズはなるだけ以前と同じにしたかったんです。

地味なところではありますが、「時計機能がホンモノ」という部分、すごいです。商品的には特に時計を売りにしたものではないのにも関わらず、ちゃんと現実の時間がわかるなんて、想像力をかきたてられるじゃないですか。画面上にあるアイコンのどれをさわっても、アプリとして起動するところが、ほんとうにすごい。スマートレディ(演:進藤あまね)の声でどこそこにオルフェノクが出現しました、と言ってくれる地図アプリとかね(笑)。
このアイテムがあれば『パラダイス・リゲインド』の作品世界にひたることができる。とてもプレイバリューの大きな、いい商品だと思います。これは実際に手に取って、アイコンをタッチしてくだされば、面白さがわかってもらえると思います。
井上さんの書かれるセリフは、時として「哲学的」な深みを感じることがあります。今回で言うなら「これが俺だ。それだけのことだ!」が特に気に入っています。こんな言葉、今の日本社会で表に出すと、社会性の有る無しを問われたりしかねません(笑)。でも発信するかどうかは別として、常に心のどこかに持っておかないといけない、大切な言葉だと思うんです。自分の中で常に「これが俺なんだ」「これが私なんだ」という信念を持っていたほうがいい。自分で自分のことを理解できていないと、絶対に生き方がブレてしまいます。

もしもご家族の方から「どうしてこんな高額な商品を買うの?」と問われたとき「これが俺だ。それだけのことだ!」と言ったなら、たぶん反感を買ってしまうかもしれませんが(笑)。僕は常々、人間とは常に「背徳心との戦い」を行っている存在だと思っているんです。こんなことをしていていいのかな……とか思いながらも、自分の行いそのものは変わらない。後ろめたさがあるのか、堂々としているのか、他人からは伺えないわけですから。どのみち時間は戻りませんし、すでに始まっているのなら、そのまま最後まで突っ走ろう。ジャンルはさまざまですが、コレクションを集めているときは特にそんなことを頭にめぐらせています。「CSMファイズドライバーNEXT」を部屋に飾る際には、ぜひ和紙に毛筆で「これが俺だ。それだけのことだ」としたためてほしいですね(笑)。そうして、己の信念を貫いてもらいたいです。
ずっと『仮面ライダー555』という作品を愛し続けてくださるファンの皆様のおかげで、20周年記念作品を作ることができましたし、こんなに素晴らしい商品が生み出されました。20年間、応援をしてくださるなんて、当たり前のことではありませんよね。僕もいろいろなジャンルにこだわってモノを集めることが多いんですけど、20年間変わらずに好きでいることってなかなかできるものではない。僕自身、非常にオタクな気質がありますし、ファンのみなさんの気持ちがわかるほうだと思っています。趣味事を中心に生きているものですから(笑)。これからも『仮面ライダー555』を応援していただけるならば、ファンのみなさんに喜んでいただける魅力的な商品が、まだまだ増えるかもしれません。そんな機会があれば、また何か協力させて頂きます。みなさんが「仮面ライダー555と出会って、人生が豊かになりました」と思ってくだされば、それが一番です!

©石森プロ・東映