



佐野 カッコいいですね! 僕は今日のインタビューにあたって、『仮面ライダー鎧武』の撮影で使っていた「戦極ドライバー」の小道具を持ってきたんですけど、これって当時の「DX」版のつくりをベースに塗装などをディテールアップしたものなんです。ロックシードを“切る”刀の部分を比べてみても、CSMはさすが大人向けですね。刀が金属で出来ていて、“本物”よりもさらに重厚な印象があります。
小林 ほんと。この刀ならなんでも切れそう。家に持って帰って研いでみたくなります。
佐野 この刀を使ってスイーツ作ればいいんじゃないかな(笑)。
小林 それでは料理はじめまーす、と言ってこの戦極ドライバー出して、そのままフルーツをトントントンって(笑)。
佐野 外見もすごいんですけど、ベルトの中にオレたちのセリフとか、主題歌とか、BGMとかたくさん収録されていて、ボタン操作でいろいろな音声が聴けるというのもすごい!
小林 僕らが歌った「乱舞Escalation」をはじめとするキャラクターソングも入ってるらしいね。
佐野 それは嬉しい!
小林 すごい! もう“すごい”しか言えない(笑)。
小林 セリフを抜き出した台本を頂いたんですが、読んでいくと「こんなシーンあったな、こんなセリフ喋ったなあ」とか、パッと思い浮かんでくるんです。言葉のパワーって凄いんだな……としみじみ思いました。戒斗のセリフは、僕がふだん絶対に言わない言葉でありながら、ファンの方たちの心に響く「名言」としていまも残っているのがすごいなあって感じています。
佐野 さきほど、紘汰のセリフをたっぷり収録してきましたよ。7年前は技術的に難しかったようなギミックでも、今では高いクオリティで実現することができるというのが驚きですね。収録時間もDX版とはケタ違いに増えていると聞きました。
小林 7年を経た“今”だからこそ、実現することができた商品なんだな……と感じますね。


佐野 初期の紘汰はどちらかというと、陽気なセリフが多かったですね。「これがオレの……変身」(第1話)というのがあったでしょう。僕は『仮面ライダークウガ』(2000年)が好きだったので、クウガ=五代雄介が第2話で言ったのと同じようなセリフを口にすることができて、胸アツだなあ……って当時思っていました。変身に至るまでの状況とかは違うんですけどね。
また「違う!強さは力の証明なんかじゃない!」(第5話)も好きなセリフです。収録する前にもう一度『鎧武』テレビシリーズをざっと観返したんですが、観ていて僕がいちばん“心に響いた”のは「力が強いだけではいけない。その力の“使い方”が大事なんだ」ってところ。確かにそうだなあって思いました。『鎧武』は7年前に作られた物語ですけど、今の世界ともリンクしているなって感じたんです。
そしてやっぱり挙げておきたいのは「ぜってえ許さねえ……!」ですね。「ユグドラシル! もう絶対許さねえ!」とか、何度も「許さねえ」って言っていたので、紘汰はもう「許さない」人だと思われてるのかも(笑)。大丈夫、なんでも許さないわけじゃなくて、ちゃんと許します(笑)!

小林 戒斗のセリフも“パワーワード”が多いです。初めてバロンに変身したときの「バロンだ!」(第3話)なんてのも、めちゃめちゃインパクトあったでしょ。
佐野 ザックが「バナナ!?」って言ったのを受けての「バロンだ!」なんだよね。
小林 当時から会う人みんなから「バロンカッコいいですね」って言われましたし、戒斗の言葉に勇気づけられます、と言う声もたくさんいただきました。「俺が屈しない限り、貴様が勝ったわけではない」(第14話)とか。
佐野 オレ、戒斗の言葉ですごく好きなのがあるんです。「葛葉、お前ももっと強くなれ! それがお前の務めだ」(第31話)っというセリフです。
小林 それは僕も好きですね。このセリフは、他のときのように相手がムカつくような言い方じゃなくて、しっかりとした話し方をしているんですよ。
佐野 いつも戒斗は自分の信じる“正義”を貫こうとしていて、紘汰をはじめ他の人間とは絶対に相容れなかったでしょう。でも、このときだけは紘汰の“強さ”を理解して「さらに強くなれ」と言っている。戒斗が紘汰を受け入れた、という意味でも、めっちゃ好きなシーンでした。
小林 共に共通の敵と戦ったから、紘汰のことを理解できたっていう部分があったんだろうね。

佐野 鎧武の“決めゼリフ”として「ここからは、オレのステージだ!」は外せないでしょう。最初のころ、プロデューサーの武部(直美)さんと「鎧武って決めゼリフないんですか?」なんて相談したことがありました。僕が決めゼリフに憧れていたので、どこかで作っておきたかったんです。「輪切りにしてやるぜ!」(第6話)とか「パインパインにしてやるからな!」(第8話)とかもいいなと思ったんですけど、「ここからは俺のステージだ!」で決まって、そのまま定着しましたね。
ストーリーが進んでからは、どんどんシリアスなセリフが増えていきました。すごく記憶に鮮明なのは、第35話の「どうしてお前が……。やめろ! ……光実!!」というセリフ。斬月・真の変身者が貴虎(演:久保田悠来)ではなく、光実(演:高杉真宙)だったことを紘汰が知るシーンなのですが、台本では「ミッチ(光実のニックネーム)」だったところを、僕が諸田(敏)監督に「ここは“光実”と呼びたいんですけど」と提案したんです。そんなこともあって、思い入れの強いシーンになりました。
小林 「痛みには慣れている。この程度の痛み、どうということはない。いいや、ガキのころからオレはずっと耐えてきた! 弱さという痛みにな!」や「オレの身体はとっくにヘルヘイムの毒が回ってる。どうせこのまま死ぬだけだ。惜しい命じゃない」(第43話)と、ストーリーが佳境に入ってからの戒斗のセリフは、どれもすごいんですよ。今回は「声」の収録ですから、相手との感情のぶつけあいもなければ、身体を動かして表現することもない。あのときの言葉だけを抜き取ってしゃべる難しさがありましたね。
佐野 鎧武とバロンの最終決戦、第45〜46話では豊と「戒斗〜〜〜ッ!」「葛葉〜〜〜ッ!」って叫び合ってました。このあたりは、どのセリフも愛着があり、ひとつに絞ることができないです。すでに人間じゃなくなっているので「姉ちゃんの手料理食べられないや……」(第45話)と口にしたり、心に残る言葉が多いんですよ。戒斗を抱え込んでの「泣いていいんだ……それがオレの 弱さだとしても、拒まない! おれは、泣きながら進む!」(第46話)や、“始まりの女”=舞と向き合った紘汰の「舞……あいつの理想は正しかった ただ道すじを間違えただけだ。だから俺たちが叶えよう。戒斗の夢を。もっと正しい方法で……」(第46話)なんてセリフも、心に重くのしかかっていて忘れられないですよ。
小林 戒斗が紘汰にかけた最後の言葉「お前は、本当に強い……」(第46話)もいいですね。それまでの戒斗ならぜったいに言わなかった、紘汰の強さを“完全に認めた”セリフです。初期エピソードでのセリフにはすべて力がこもっていますし、最終展開でのセリフはどれも思い出がめっちゃあります。どれかひとつって選べないんですけど、逆に選びだすとあれもこれもって、いっぱい出てきますね。


佐野 映像を改めて観ていただいて、しっかり紘汰の変身を“完コピ”してほしいですね。気持ちの込め方としては、まず右斜め上に「バン! バン!」で、右腰あたりからも「ズドーン!」。で、そっから「クルン!」で「ガチャン!」以上です!
小林 いまの岳のコメントを解説すると、ロックシードを持った右手にすべてのパワーを込めてから、天空に掲げ、「よし、変身するぞ!」という意思を持ってつかみ取り(ロックシードを持ち直して)、ドライバーにガチャン!と装填するってことですね(笑)。
佐野 ありがとな!(笑)。
小林 戒斗の変身で大切なのは、ロックシードを人差し指でクルッと回すところです。コツとしては「己の指を信じろ」って(笑)。
佐野 いいね!
小林 僕は手元を見ないで、自然に回すことができます。
佐野 すごい、慣れるとここまでスムーズに回せるようになるんだね。
小林 そうです。ビビッているとうまく回りません。
佐野 自信を持って回そう!
小林 “表情”も大事です。敵を睨み付けながら変身するのが駆紋戒斗です。変身を再現するならば「敵を睨め!」というのも付け加えておきます。


小林 騒ぐほどのことじゃない……。
佐野 冷静か! 冷静かお前(笑)! もっと喜べよ!
小林 欲しい奴が買って、いい商品だけが生き残る。当然のルールだ……。戒斗ならこう言うでしょうね(笑)。
佐野 放送終了から何年も経った今、新しい『鎧武』の商品が出るなんて、本当に嬉しい限りです。しかも、この時期でないと出せないハイスペックの商品ですからね! 今回、セリフを録り下ろしで収録しましたが、放送当時よりそれぞれの言葉への理解度が高まっていることもあり、より質の高いセリフが入れられたんじゃないかと思います。お買い求めくださった方は、感謝・感謝! そうでない人は……ぜってえ許さねえ!(笑)

© 石森プロ・東映