こんにちはゲストさん! 会員登録(無料)はこちらから

「プレミアムバンダイアプリ」ver.4.0.0以前のサポートサービス終了について 【プレミアムバンダイ】会員規約の改定について (1/8更新)

コードギアス 反逆のルルーシュ外伝 『黒のアルビオン』
光和元年。
神聖ブリタニア帝国最後の皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが、希代の英雄ゼロに討たれて幾ばくかの時間が流れた。
各国の首脳陣を人質にとって世界征服を目論んだルルーシュ皇帝を討つために手を取り合った世界は、ルルーシュ亡き後も平和を望んで協調路線をとっている。戦中に超合集国組成の中心となった日本や中華と肩を並べる形で世界の八割以上の国家が超合集国に参加し、大きな視点での政治が執り行われていた。また、軍事力は黒の騎士団が超合集国から委任される形で譲渡、運用しているため、大きな抗争が起きることは無く、世界は平穏を保っていた。
 しかし――
「ゼロの象徴たる機体が必要です」
 そう提言したのは、超合集国最高評議会首席補佐官を務めるシュナイゼル・エル・ブリタニア。実質的に世界のナンバー2に位置する彼が言葉を向けたのは議長の皇神楽耶ではない。黒衣の仮面の男、ゼロだ。
「……必要ない」
 ゼロは言い切る。その一部も生身を晒さない仮面からは表情を読み取ることは出来ない。  超合集国最高評議会の場に、黒の騎士団CEOとして出席しているゼロは、シュナイゼルの提言に対し頭を振った。 「しかし、いくら世界全体が平和へと歩みを進めようとも、必ず争いの芽は出てきます。それを未然に防ぐには、悪逆皇帝ルルーシュを討ったゼロ、あなたが力を持っていることを示す必要がある」
 シュナイゼルの言葉も道理だ。その言葉が平和を保つためだということも理解できる。しかしそうではない。
 世界は平穏でなくてはならない。そうでなければ、“彼”は何のために命を賭したのか。
 確かに小さな争いの種はある。長年続いた争いのある世界が完全に争いの火を無くすことの出来ないのは当たり前だ。個々を保った人間が生きる世界なのだから、それが当たり前なのだ。だから、ゼロという記号に争いを治める力を付与することで、争いを未然に防ごうというのは正しいのかもしれない。
 ただ、ゼロは、ゼロとなった枢木スザクには、その考えを容易に受け入れることは出来なかった。
「それは違う。我々黒の騎士団が過度な軍事力を持つことは民衆に恐怖を与え、逆に新たな争いを生み出しかねない。あくまで我々は世界を平和に保つためにある。そのために黒の騎士団の監査をグリンダ騎士団に依頼している」
 同席しているグリンダ騎士団の団長、オルドリン・ジヴォンも頷く。
「……」
 シュナイゼルが「致し方ない」という表情を浮かべる。ゼロがそう言う以上、シュナイゼルはその言葉を否定することは出来ない。

「おかえりなさい、ゼロ」
 超合集国最高評議会を終え、黒の騎士団の本部の自室に戻ると、ゼロとの面会に訪れたナナリー・ヴィ・ブリタニアが出迎えてくれた。
「ただいま、ナナリー」
 と、久方ぶりに仮面を脱ぎ、笑顔を見せるスザク。
「今日は来月に控えたスペインへの慰問のスケジュールについて、だったよね」
「はい。スザクさ…、いえ、ゼロにはいつも手間をかけさせてしまって……」
「はは。今はただのスザクだよ、ナナリー」
 ゼロの正体を知る数少ない人間、ナナリーはその中でも特にスザクが本来の自分で接することが出来る。常にゼロという重圧を抱えるスザクにとってナナリーとの時間は非常に大切なものだった。
 超合集国の外郭団体、世界人道支援機構の名誉顧問となったナナリーは、未だ戦争の傷跡の残る地域に赴き、人道支援活動を行っている。スザクがゼロとしてナナリーに帯同することも少なくない。
 ナナリーがスザクの下に訪れたのも次回の慰問について打ち合わせをするためだった。しかし、ゼロを呼び出す慌ただしく鳴った緊急コールによって、それが叶うことはなかった。
「超合集国最高評議会から入電!日本革命軍を名乗る武装集団が品川シーサイド空港を占拠したとの連絡です」
 先ほどまでの笑顔と一転して、スザクの表情が曇る。
「スザクさん……」
「心配しなくても大丈夫。すぐに戻るよ」
 心配するナナリーに笑顔を見せる。しかし、心中は穏やかではない。
――ゼロが力を持つ必要はない。それなのに……。
 スザクは再び仮面を手に取って、ナナリーが残る部屋を後にする。

 黒の騎士団司令室の巨大なモニターには、望遠カメラで撮ったと思しき品川シーサイド空港の様子が映し出されている。また、サブモニターには、武装蜂起に使用されているナイトメアや容疑者と思われる人物のリストなど、いくつかの情報が表示されていた。
「状況は?」
 入室したゼロが短く聞くと、総司令官の藤堂鏡志朗(とうどうきょうしろう)がそれに答える。
「良くはないな。古仁科、ゼロに現状報告を」
 藤堂に促され、本件の担当に選ばれた参番隊の隊長、古仁科諒(こにしなりょう)がサブモニターを使い、ゼロに報告する。
 日本革命軍を名乗る武装集団は、東京湾内の埋め立て地に建てられた品川シーサイド空港を陸海空の三方面から30機あまりのナイトメアによって電撃的に制圧。空港内にいた約四千人の旅客、職員を人質に立て籠もったという。
「それが一時間前です。超合集国最高評議会の隙をついたのだと思われます」
「犯人の身元は?」
「坂東少佐……、いや、坂東森(ばんどうしん)。元日本解放戦線の生き残りだ」
「!?」
藤堂の言葉にゼロがわずかに動揺する。なぜならば、坂東はスザクが幼い頃、まだブリタニアとの戦争が始まる前に藤堂らと一緒に稽古をつけてくれていた知人だからだ。
「坂東さん、どうしてこんな……。やっとみんな平和に向かって歩み寄ろうとしているのに……」
 古仁科が歯噛みする。
「古仁科は9年前のブリタニア侵攻時、坂東の部隊に配属された新兵だったんだ」
 スザクが抱いた疑問に藤堂が補足する。日本革命軍が日本解放戦線の生き残りだと判明したからこそ、古仁科を充てたのだと理解した。
「坂東率いる日本革命軍は、草壁徐水らを排したゼロに対して、反旗を掲げている。ゼロ、ここは……」
「わかっています、藤堂さん」
 スザクの胸の内に言い表せない感情が頭をもたげる。しかし、今は一刻も早く捕らわれた四千人の安全を確保することが最優先だ。
「超合集国最高評議会に繋いで欲しい。この件は我々黒の騎士団が対応する」
METAL ROBOT魂 <SIDE KMF> ランスロット・アルビオン ゼロ
「そう言うと思ってたわ~」
 出撃準備の進む黒の騎士団本部の格納庫の一角に、ラクシャータによって見覚えのある機体が運び込まれていた。ラクシャータは機材の入ったコンテナの上に寝そべり、手に持った煙管でゼロの視線の先を指し示す。今やいくつもの肩書を持つ人間とは思えない。
「黒い……、ランスロット・アルビオン」
 ゼロが少し戸惑いを見せる。
「ルルーシュ皇帝統治下から進められていた統合打撃装甲騎計画の一つです。ブリタニア製のナイトメアを研究開発する必要もあって私たちパール・パーティーが組み上げました」
と、答えるのは浅黒い肌をした両脚義足の女性、ネーハ・シャンカール。かつてのマドリード決戦にも参加したラクシャータに師事する研究者だ。
「ロイド博士が残した資料を基に、少し改良を加えて建造しました。性能的には紅蓮聖天八極式と同等です」
 黒の騎士団の技術部からパール・パーティーに出向している加苅サヴィトリが説明する。
 まるで準備していたかのような手際の良さ。おそらくシュナイゼルがこのような事態を見越してあらかじめラクシャータに依頼していたのだろうとスザクは考える。で、なければ、白を意味するアルビオンの名を冠した機体を黒で染め上げたりはしないだろう。
「わかった。使わせてもらう」
 まさか、ゼロとなった今、この機体に再び乗ることになるとは思ってもいなかった。
「私たちの可愛いZ-01Z0、大切に使ってね~ん」
「ゼロ……、ゼロか」
黒のアルビオンの型式番号を耳にし、ゼロが独りごちる。
「了解した。これよりこのアルビオンゼロで出撃する!」
「月刊ホビージャパン2019年2月号」をお楽しみに!

購入ページはこちら