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―HENSHIN by KAMEN RIDERに対して最初に抱いた印象は?
僕のブランド以外にもいくつかのブランドが今回のコラボレーションを行うというお話は事前情報として伺っていたので、FUMITO GANRYUとして「HENSHIN」というキーワードを基にいかに個性を出し、着地点をどのようにするかということをまず考えました。
今までやったことがない試みだったというのが一番大きかったと思います。昭和のライダーシリーズではありますが、僕自身も幼い頃に観ていましたし、それが今でも継続されていて、平成ライダーへと進化している。そのような歴史あるものに対して、自分がどう関わっていけるか挑戦してみたいと思ったのが、今回お引き受けさせていただいた理由です。
―今回のHENSHIN by KAMEN RIDERのデザインをする上で意識したことはありますか?
FUMITO GANRYUとは違った層の方々に、僕の洋服を見ていただく機会を増やすことができるのかなとまず思いました。そして、それを実現するためには、今まで以上に懐の深いデザインやビジュアルになっていなければいけない訳で。そういった部分を今回は強く意識しました。そういう意味では、学びと新たな発見がありました。
まず「クウガ」は、僕が幼かった頃に観ていて好きだった昭和の仮面ライダー「ストロンガー」を進化させたようなデザインだったので、それが決定打でした(笑)。「555(ファイズ)」に関しては、そもそものデザインが好みだったと言いますか、ひと目見た瞬間「これ」って直感的に決めました。
キャラクターのアレンジというのは、デザイナーによっていかようにもなると思うんですが、自分自身が40代半ばに差し掛かっているのもあり、同じ年代の方々にも届くようなデザインにしたいと、まず考えていました。その中で、クウガや555の強さや良さを残しつつ、ウェアとしていかにリアルにするかという点を重要視しました。
今回のデザインに関して言うと、全てのグラフィックがギザギザした模様になっているのですが、これは素材として採用している天竺を拡大するとこのようなギザギザの形状に見えるんですね。それをある種の※トロンプルイユと言いますか、ローゲージニットの様なニュアンスに置き換える事によって、ラブリーに曖昧化し、リアルに着られるものを目指しました。 今回の様なデフォルメに重きをおいた技法では、あまりにも細かなハイゲージ感を狙うとその良さが無くなりますし、かといってあまりにも荒くしてしまうと、今度は何を描いているのか分からなくなってしまう。そのサイズ感を試行錯誤しながら、結果的にカウチンセーターと同じくらいの目のサイズ感に着地しました。これも一目間違えると、まったくそれと分からなくなってしまうので、ここに至るまで何度も納得がいくまで手直しをしました。
※目の錯覚を利用した見せ方や騙し絵のこと。
―デザインを進めていくうちに感じた、ご自身のブランドとの共通点はありましたでしょうか?
ある意味原点回帰と言いますか、実は僕自身のブランドでも「HENSHIN」というのをキーワードにしていたのかなって気付かされたんです。現在、メンズベースのユニセックスウェアブランドとして展開させていただいているのですが、メンズは特にデザイン上での決まり事が多いんですね。それが面白さだったりもするのですが、同時に難しさでもあって。そういった中、どうやったらドラマチックなものになるのか常に考えなくてはいけない。 絶対ではありませんが、メンズ服において、全くのゼロからスタートするというよりは、すでにあるものをどう変化、進化させるかが、腑に落ちる着地点となる事が多いと感じます。ドラマチックに変化させることは、「HENSHIN」させる事なんだと再認識できて、良かったと思っています。
プリント一つとってもかなり色数を使っている部分でしょうか。今だと新しい技術で、フィルム状の転写の下地の上に、インクジェットで多色刷りを表現するんですね。今回に関しては、昔ながらの顔料で何版も使って多色刷りを行っています。それって本来はコストも掛かりますし、なかなか現実的に難しくなってきた手法なんです。 しかし、今回は拘りたかったその方法で実現する事が出来ました。この手法がとれたことで、永年愛用していただき経年変化を楽しみながら、洋服自体が「変身」し続けるという意味合いも込めています。
―ご自身が描く仮面ライダー作品を含めたヒーロー像はお持ちですか?
もちろんあります。仮面ライダーが好きなところは、1対1で戦うじゃないですか。なんだったら敵の戦闘員もでてきて多勢に無勢ながら正々堂々勝負するという、その真っ向で勇敢な姿勢こそ、まさに僕が持つヒーロー像なんです。
―本コレクションを通してお客様に伝えたいことは?
顔料プリントを施したTシャツになりますので、末永く着用していただくことで顔料自体が固くなりひび割れてきたりします。また生地もヘビーオンスのビンテージアメリカンを彷彿させるものを選んでいますので、プリントのクラックや生地の質感の変化など、デニムとは違ったエイジングの面白さを感じていただければと思っています。また、この一着がお子様の世代まで受け継いでもらえるような、そう言った物語が生まれたら、作り手として大変嬉しく思います。




