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―HENSHIN by KAMEN RIDERに対して最初に抱いた印象を聞かせていただけますか?
もともと「ANREALAGE」では、日常と非日常の境界を超えるような服作りを常に心掛けています。そこには「何かを変える」、すなわち日常を非日常に変化させること、または非日常を日常に変化させるということが根幹にあります。そのようなことを踏まえた上で、普段自分たちが表現している手法を上手く使えば、ファッションという側面から、「HENSHIN」という言葉に対した表現方法が何かあるかもしれないと思ったのが初めの印象です。
今まで自分たちがつくる洋服では、外から受ける光により服の色が変化し洋服自体が「変身」していく、また、光の反射で画面上に異なる物が映し出される、といったようなことを行ってきました。その経験から、今回は肉体と精神というコンセプトを新しくいただいたので、その中で実世界と存在しないバーチャルな世界でのギャップというものをファッションで表現できるのでは?と思ったのに加え、自分としてもすごく取り組んでみたいテーマでもあったというのもあり、お受けさせていただきました。
2017年に、洋服とARを融合させたコレクションをANREALAGEで発表させていただいたのですが、その時は目で見える洋服のロゴマークに対して、AR上では音が流れてきたり、目で見えていないものが見えてきたりということをやっていました。しかし、ファッションのサイクルだとどうしても半年ごとに更新されてしまい、せっかくの表現も過去のものへとなりがちだと思うんですね。そんな想いのなか、その続きをいつかどこかで描きたいというのを、ファッションディレクターの山口壮大さんと話していたんです。
それから2020年になり、フィジカルなファッションと物質的ではないファッションというものの境界が、すごいスピード感とともに無くなってきたと感じています。だからこそ今のタイミングでもう一度、リアルな世界とアンリアルな世界を行き来するファッションをやりたいという気持ちが湧きました。そういう意味では、すんなりと解釈できたと言えるのかもしれません。
まず、仮面ライダーWに絞りこむという作業から入り、その中でANREALAGEのロゴからWとの親和性を見つけ出しました。ANREALAGEのロゴというのは、AとZを重ねた形になっているんですね。それはAからZの森羅万象をファッションの中で表現していくという思いからなんです。それに加え、始まりから終わりまでというのが一直線のAからZではなく、Zの隣にはまたAがあるような円環として捉えていたので、ガイアメモリの概念とすごくリンクする部分があるなと感じました。
アルファベットごとに表現されるガイアメモリ。それによって地球の根源的な記憶であるアカシック・レコードを引き出していくというのが、僕らのA to Zの円環とガイアメモリのA to Zの円環を重ねて、デザインにすることを意識しました。
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―仮面ライダーWを選んだ理由、また世界観(実世界+データ世界)をデザインに落とし込むにあたり悩んだり苦労した点は?
通常のデザインではアルファベットのトップの部分に、ジョーカーであったら「J」というように一文字だけ表示するのですが、サークルのベースはそれを象徴するイメージで配置しています。
しかし、それをフィルターに通した時には躍動感を持ち、洋服を着ているその人自身が変身していくという目的を持ってやっていることもあり、平面の2次元的なグラフィックのイメージと、フィルターを通した時の3次元的なイメージがちゃんとリンクするようにするところは、しっかり意識して作りました。
―HENSHIN by KAMEN RIDERとのコラボアイテムのデザインを進めていくうちに感じた、ご自身のブランドとの共通点はありましたでしょうか?
一見、なんの変哲もないTシャツではあるんですけど、それが画面の中だとフィルターが掛かり、まったく違う世界へと誘ってくれる。このTシャツ自体がスイッチを入れるようなものであったり、その人自身を「HENSHIN」させる仮面ライダーのベルトのような存在であったりといったような意味合いこそが、我々のコラボレーションの本質なんだろうなと思いました。
絶対的に変わらないとされている物を変える強さを持っている人でしょうか。それは、人に限らず物でも当てはまります。
―本コレクションを通してお客様に伝えたいことは?
ファッションと言うと、そこに形やサイズがあることで、自分に合う、合わないという選択の基準が生まれてしまいますよね。でも、実はそれだけではないファッションの拡張の仕方もあると思っています。ましてや現代では、データの世界というのがリアルな世界と同じくらい日常性を持ってきている現実がある。
その中でも自分をどのように見せたい、どう装いたいというのは、ファッションの精神と共通していると思っているので、いまのファッションの概念とは違う、形なきファッションの始まりとなるようなきっかけを与えられたらいいなと思っています。




