──「S.H.Figuarts とにかく明るい安村」の商品化には、大きな反響がありましたよね。そもそも実在する著名人のフィギュア化は、どのようなところから始まったのでしょうか?
最初は、洋画のヒーローキャラクター等の実在する人物を商品化する際にお顔を再現する手段を探す、というところから始まりました。その商品の展開時期に”魂のデジタル彩色技術”という手法が確立し、スタンダードなサイズの2センチに満たない小さな頭部パーツのフィギュアでも、俳優さんの表情をリアルに再現できるようになったんです。そこから技術採用の幅を広げ、初期展開のマイケル・ジャクソンから近年のジャミロクワイ、さらに日本の芸人さんのフィギュアも企画するようになったのが、近年の実在する著名人のフィギュア化に繋がりました。
──購買層としては、そのアーティストや芸人さんのファンの方が多いのでしょうか。
ネットなどの反響や商品のアンケートで知る限り、芸人さんのフィギュアはフィギュア好き・おもちゃ好きの方がよく購入してくださっている印象です。その中でジャミロクワイに関しては、レコードのターンテーブルに乗せて飾っている写真やカセットのアルバムと共に撮影されている様をSNSで見かけ、フィギュア好きの方ではなく元々の音楽好きの方も比較的多くお手に取っていただいたようでした。
──商品化する人物はどのように決めているんですか?
まだ模索しながら進んでいるところではありますが、現段階での商品化選定は「圧倒的な存在感のある方を」と考えています。シリーズ化して毎月リリースするアイテムとは考えておらず、1つ1つ丁寧に商品を作りこみながら、しっかりプロモーションし話題を喚起してお届けしていきたいですね。安村さんはやはり昨年の海外でのご活躍が決め手になりました。社内でも「“TONIKAKU”すごいね」と声が多く聞こえてきた事も、企画を進めたきっかけです。
──企画を提案した際、安村さんご自身はどのようなリアクションでしたか?
とても喜んでくださいました。細かい商品仕様のイメージや、「商品化によってフィギュア業界へ話題喚起を起こしたいのです」という思いを素直に伝えさせていただいたら、終始「すごいですね。良いですね」と言ってくださり、賛同頂けました。企画してよかったな、と思いましたね。
──造形についても細かく教えてください。「S.H.Figuarts とにかく明るい安村」は、なんといってもパンツ一丁でほぼ裸の姿であるという点が大きな特徴ですよね。
はい。人物キャラクターで最も肌の面積が大きいS.H.Figuartsのフィギュアと言っても過言ではないかもしれません。本来はシンプルな装飾のキャラクターをフィギュア化する場合、ポージングの為の可動域を作るよう細かくパーツを分ければ分けるほど綺麗な人体のプロポーションから離れていき、アンドロイドのようになってしまいます。でも安村さんをフィギュア化するとなったとき、「可動させない」という選択肢はないと思いました。ポージングが命の方ですから。手に取った方にもさまざまなポーズを取らせて楽しんでほしいという思いから、可動する事に舵をきって試行錯誤を重ねていきました。
──ふっくらとした体のラインにもこだわりを感じます。
ネイキッドポーズは、パンツを隠すというのが重要なポイントです。主にお腹やふともものお肉が重力で垂れて形状が変わる事により、パンツが隠れてネタが成立していると分析しています。それに対してフィギュアでは重力で垂れて形状が変わる事はありませんが、ネイキッドポーズが再現出来ない・・というわけにはいきません。そのためにお腹のパーツだけ柔らかい素材を使用して、お腹の柔らかさや形状変化の再現を狙っています。またふくらはぎの一部を少しだけ引き出せるようにして、足を上げた時に視界を遮る面積が変わるようにしました。こうしてポーズを取らせるとパンツが見えなくなりますよね。
──見事にお腹が隠してくれていますね!確かにパンツが見えてしまったら、「安心してください、はいてますよ」という安村さんのネタの根幹を表現できていないことになりますもんね。
角度がとっても大切ではありますが、パンツががっつり見えてしまったらすべて台無しなんです。会議でもみんなで「ダメだ!かなり見えてるよ!」「どうすんの!やり直しだ!」と、ずっと検証し続けていました。僕も原型師さんもメンバーはみんなおじさんだったんですけど、おじさんたちが寄ってたかって中年男性の体を真面目に作るという楽しい会議でした。全員で真剣に安村さんの肉体について考えていましたね。公式の商品写真では、安村さんのネタ再現したポーズを8種くらい撮影しましたが、すべてのポーズで100%隠すのは難しくて。(実はポーズによっては実際のネイキッドポーズもほんの一部だけパンツが見えてしまっているものもあります。)商品写真の撮影時はとても苦労しました。カメラマン様とも「むちゃくちゃ見えてる!!やり直し!!」と、通常商品の倍以上の時間をかけてテイクを重ねましたので、見えているのか見えていないのかを探してみていただいても面白いかなと思います。
──一番のおすすめポーズはありますか?
この商品オリジナルの「開脚のポーズ」です。後でまたご説明するのですが、制作にあたっては顔も体型も含めて安村さんの全身をスキャンしています。なので、安村さんご自身の可動範囲も想定して反映されているんですよ。試作品を展示した「TAMASHII NATION 2023」では安村さんが配信番組に出てくださったのですが、その時にこの「座って開脚するポーズ」を実演してご提案してくださったんです。「フィギュアでは自分より開脚してほしい」とおっしゃっていたんですけど、ご本人の可動域の範囲内でしか開かないので、「そこはフィギュアでも無理なんです……」と、ここでお答えさせてください。
本商品のオリジナルポーズ
──可動域まで忠実にご本人を再現していると(笑)。表情パーツは「通常顔」「ドヤ顔」「笑顔」の3種類が用意されていますが、爪ほどの大きさなのに精巧な作りに驚かされました。これもスキャン技術によるものでしょうか?
はい。スキャン作業時は安村さんにさまざまなポーズや表情を取っていただいたんですけど、めちゃくちゃ面白かったですね。「カメラに向かって、ネタ中の『HEY!』の顔をしてください」「全開の笑顔をください」と順番にリクエストしていったのですが、カメラではなくスタッフのほうを見て笑顔をしてくださったり、テレビで見ているままの楽しい方でしたね。
──この満面の笑顔も、見ているだけでなんだかこちらも笑顔になってしまいます。
めちゃくちゃ可愛らしいですよね。とにかく買ってくださった方を笑顔にできる商品にしたいと思っていたので、まさにそういうものが作れたかなと思います。
──安村さんは完成したサンプルをご覧になって、どんな反応をされていましたか?
都度ご監修いただいたのですが、サンプルを見た時は「すごいじゃん!」と喜んでくださいました。基本的に可動の割り振り等お任せいただいたので、我々を信頼してくださっていたのかなと思います。
──試作品を展示した「TAMASHII NATION 2023」の会場での反響はいかがでしたか?
展示そのものでも見た方には笑顔になって頂きたくて、展示ブースに少し工夫を凝らしました。フィギュアを置いた台にボタンを設置し、それを押すと安村さんのネタの音楽が流れてただ光るというシンプルな仕組みなんですけど、皆さん笑ってブースと商品をご覧頂けていたように感じます。自分自身でも、会場で完成形を見たときはめちゃくちゃ笑いました。あのメロディが流れて強い光と共に「HEY!」という声が響いたら、やっぱり笑ってしまうんだなと。たくさんの方に笑っていただいて、会場でもとてもハッピーな感じが伝わってきたので、商品化とブース作成を出来てよかったなと思いましたね。
──いろいろな楽しみ方ができそうですね。ヒーローのフィギュアと並べて、一緒に戦っているようなシチュエーションづくりなども楽しめそうですし。
そうですね。とにかくまずはネイキッドポーズ再現を追求するのが楽しいフィギュアだと思います。ヒーローには決めポーズがありますが、だいたい1〜2種類ですよね。対して安村さんはネタの数だけポーズがある。そして今後増えていく!と勝手に予想しています。アクションフィギュアの魅力である「ポーズ再現のお題」がたくさんある状態です。ぜひとも、安村さんのネタすべてのネイキッドポーズ再現にチャレンジしてみてほしいですね!
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(C)YOSHIMOTO KOGYO